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大阪地方裁判所岸和田支部 平成3年(ワ)498号 判決 1992年6月19日

主文

一  原告らと被告との間において、別紙物件目録記載の本件不動産の一ないし二九のそれぞれにつき、原告裕子が持分四分の一を、原告淑子が持分一六分の一を、原告恵子が持分一六分の一を有することを確認する。

二  被告は、別紙物件目録記載の本件不動産の二、五ないし八、二八および二九のそれぞれにつき、平成三年一月二三日の遺留分に基づく減殺請求を原因として、原告裕子に対し持分四分の一の、原告淑子に対し持分一六分の一の、原告恵子に対し持分一六分の一の各移転登記手続をせよ。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  申立

1  原告ら

主文と同旨。

二 被告

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  主張

一  原告ら

(請求原因)

1 被相続人辻川正久、原告ら及び被告の身分関係などは別紙身分関係図記載のとおりである。

2 被相続人辻川正久は、その遺産である別紙物件目録記載の本件不動産などにつき、平成二年六月二九日、公証人細川顕に委嘱して遺言公正証書を作成し、その全てを被告に遺贈した。

3 原告らは被告に対し、平成三年一月二三日到達の内容証明郵便にて、遺留分に基づき減殺請求する旨の意思表示をした。

4 被告は、平成二年一二月一八日、本件不動産の六ないし八につき、被告が単独で相続した旨の所有権移転登記を了し、平成三年二月七日、本件不動産の二、五および二八につき、被告が単独で相続した旨の所有権移転登記を、本件不動産の二九につき、被告を所有者とする所有権保存登記を了した。

5 よって、原告らは遺留分に基づき、本件不動産の一ないし二九のそれぞれにつき、原告裕子は持分四分の一を、原告淑子は持分一六分の一を、原告恵子は持分一六分の一を有しているから、その確認を求め、本件不動産の二、五ないし八、二八および二九のそれぞれにつき、平成三年一月二三日の遺留分に基づく減殺請求を原因として、原告裕子に対し持分四分の一の、原告淑子に対し持分一六分の一の、原告恵子に対し持分一六分の一の各移転登記手続を求める。

(抗弁に対する認否、並びに、再抗弁)

被告主張の相続債務等が存したとしても、また、原告裕子が被告主張の預金(但し、預金残高は約一五〇万円)および自動車(但し、時価は数十万円)を取得したとしても、まず、被告は原告らが遺留分に基づき減殺請求の意思表示をした後に別紙物件目録記載の売却済不動産(一)および(二)などを他に売却したから原告らに対し不法行為に基づく損害賠償責任を負うところ、その損害賠償額は総合計一億〇六二九万円余であり、原告らは平成四年一月二四日の本件訴訟第三回口頭弁論期日において被告に対し被告主張の相続債務等の求償権につき右損害賠償債権をもって対当額で相殺する旨の意思表示をしており、更に、被相続人辻川正久は、住友銀行泉大津支店の普通預金(口座番号三四三五四三)三五〇万七五五〇円、大東建託株式会社に対する建築代金内入金として預託した三六〇〇万円、辻川正良に対する大阪府泉大津市豊中七七五番の宅地の一部の売買代金債権三五〇〇万円などの相続債権をも有していた。従って、被告主張の抗弁事実は、本訴請求にかかる遺留分に基づく減殺の結果に影響しない。

二  被告

(請求原因に対する認否)

原告らの請求原因1ないし4の事実は認める。

(抗弁)

1 被告は、別紙相続債務等目録記載の相続債務等を支払ったほか、相続税(二億六〇五八万〇五〇〇円)を負担している。

2 原告裕子は、遺産のうち、住友銀行和泉支店の預金の解約金一六一五万七二六〇円の交付を受け、軽四輪乗用自動車をも取得している。

(再抗弁に対する認否)

被告が、売却済不動産(一)および(二)を他に売却したこと、原告ら主張のとおり相殺の意思表示があったこと、被相続人辻川正久が原告ら主張の債権を有していたことは認める。売却済不動産(一)の売却代金は三億二七三二万〇四〇〇円であり、同(二)の売却代金は七二三七万五〇〇〇円であった。

第三 証拠関係(省略)

理由

一 原告主張の請求原因1ないし4の事実は当事者間に争いがない。

二 被告がその主張の相続債務を支払ったとしても(但し、葬儀費用および相続税は遺留分に基づく減殺請求においては考慮の対象とならないものであるから、これらに関する主張は失当である)、また原告裕子が被告主張の遺産の交付を受けているにしても、売却済不動産(一)の売却代金が三億二七三二万〇四〇〇円であること、同(二)の売却代金が七二三七万五〇〇〇円であること、被相続人辻川正久が原告ら主張の債権を有していたことは被告において認めており、そうとすれば(自動車の価格や、売却済不動産の売却諸経費および公租公課が不明であるにしても)、相続債務についての被告の原告らに対する求償権の額は、売却済不動産の売却代金についての原告らの遺留分に基づく被告に対する損害賠償請求の額を超過するとは認め難く、これが超過すると認めるに足る主張立証はない。

三 以上によれば、その余の判断をするまでもなく、遺留分に基づく減殺請求により、本件不動産の一ないし二九のそれぞれにつき、原告裕子は持分四分の一を、原告淑子は持分一六分を、原告恵子は持分一六分の一を有していると認められ、原告らの請求はいずれも理由がある。

よって、原告らの請求をいずれも認容し、訴訟費用につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(別紙) 身分関係図

<省略>

(別紙)

物件目録

本件不動産

一 大阪府泉大津市豊中七三五番

畑     三九平方メートル

二 大阪府泉大津市豊中七三七番一

宅地   三六一・五二平方メートル

三 大阪府泉大津市豊中七五三番一

宅地   一三三・七五平方メートル

四 大阪府泉大津市豊中七五三番四

宅地   一〇三・五三平方メートル

五 大阪府泉大津市豊中七六〇番一

宅地   六二六・四七平方メートル

六 大阪府泉大津市豊中七六一番一

田    二〇八平方メートル

七 大阪府泉大津市豊中七六二番一

田    二四六平方メートル

八 大阪府泉大津市豊中七六四番

畑    三三七平方メートル

九 大阪府泉大津市豊中七六五番

畑    二六一平方メートル

一〇 大阪府泉大津市豊中七六六番二

田    一六八平方メートル

一一 大阪府泉大津市豊中七六八番

田    二九〇平方メートル

一二 大阪府泉大津市豊中七七〇番一

田    四一一平方メートル

一三 大阪府泉大津市豊中七七〇番二

宅地    五五・一五平方メートル

一四 大阪府泉大津市豊中七七〇番五

田    二三四平方メートル

一五 大阪府泉大津市豊中七七〇番七

田     二五平方メートル

一六 大阪府泉大津市豊中七七〇番八

田    一六七平方メートル

一七 大阪府泉大津市豊中七七〇番九

田     六二平方メートル

一八 大阪府泉大津市豊中七七四番二

宅地    三六・三六平方メートル

一九 大阪府泉大津市豊中七七五番一

宅地    五六・二四平方メートル

二〇 大阪府泉大津市豊中七七六番一

田    二九〇平方メートル

二一 大阪府泉大津市豊中七七九番二

宅地    四三・五三平方メートル

二二 大阪府泉大津市豊中七八一番二

宅地    四五・八一平方メートル

二三 大阪府泉大津市豊中九三七番

畑     七九平方メートル

二四 大阪府泉大津市豊中九三八番

田    一一五平方メートル

二五 大阪府泉大津市豊中九四七番一

田    二一五平方メートル

二六 大阪府泉大津市豊中九五〇番一

畑      六一平方メートル

二七 大阪府泉大津市豊中九五〇番三

畑       五・五六平方メートル

二八 大阪府泉大津市東豊中町一丁目九五番一

雑種地  六〇五平方メートル

二九 大阪府泉大津市豊中七六〇番地

家屋番号八七番

木造瓦葺平家建居宅

床面積  一九七・三五平方メートル

付属建物の表示

1 木造瓦葺平家建居宅   床面積 一八・五一平方メートル

2 木造瓦葺平家建居宅   床面積 四五・二八平方メートル

3 木造瓦葺平家建居宅   床面積  九・九一平方メートル

4 土蔵造瓦葺二階建倉庫  床面積 一階 一六・一九平方メートル

二階 一一・五七平方メートル

5 土蔵造瓦葺平家建倉庫  床面積 二九・四二平方メートル

6 木造瓦葺平家建倉庫   床面積 一四・八七平方メートル

7 木造瓦葺平家建倉庫   床面積 一二・二三平方メートル

8 木造瓦葺平家建物置   床面積 三二・三九平方メートル

9 木造瓦葺平家建物置   床面積 二九・〇九平方メートル

10 木造瓦葺平家建物置   床面積 一一・五七平方メートル

売却済不動産

(一) 大阪府泉大津市東豊中町九五番三

雑種地  四九五平方メートル

(二) 大阪府泉大津市我孫子五三九番一

宅地   二五七・八五平方メートル

(別紙)

相続債務等目録

一 相続債務

1 住友銀行大津支店からの借入金       八〇〇〇万円

2 住友銀行大津支店に対する未払利息等 二八八万〇八七六円

3 府中病院の医療費            五万一七四〇円

4 国民健康保険料             八万五八〇〇円

二 葬儀費用

合計                 二六〇万〇七三六円

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